百々染だより Vol.71~Vol.80 | 思いを育み、役割を作るえんがわのプロジェクト

百々染だより Vol.71~Vol.80

執筆:

いぶきからのコメント

色や質感で選ぶのもいいけれど、染料のもととなった植物や、染められた季節、その日の天気や、作り手の表情からも選んでほしい。
同じものは存在しない百々染だからこそ、百々染をとりまくさまざまな「ことがら」や「人柄」から、あなただけの特別な一枚を見つけてください。

百々染工房で創る藍色 Vol.71

草木が生い茂る夏。
この季節になると、百々染工房には
様々な種類の染料が集まり工
房には、色とりどりのストールが並んでいます。

さらにこの時季
広く一般的に染料として用いられる「藍」が収穫できます。

百々染の藍染めには
第二いぶきの畑で育てている藍を使っています。

過去にも何度か紹介してきましたが
つくり手にとっても愛着のある定番の染料のひとつです。

過去の藍に関する特集はコチラ。
ぜひ合わせてお読みください。

・小さな種からアイを育てよう(前篇)Vol.19
・小さな種からアイを育てよう(後半)Vol.20
・冬の藍染め Vol.36

藍染めは日本でも古くから行われている染色方法で
体験工房も各地にあるため藍
染めを経験したことがある方もいるのではないでしょうか。

通常、草木で染液を作る場合は
煮立たせて染液を抽出する場合が多いですが
藍染めの成分の「インシゴ」は水に溶けず
そのまま布を染めることはできないため
特殊な方法を用いて染液を作る必要があります。

工房によって様々な方法がありますが
ここでは百々染工房のオリジナルの方法をご紹介します。

まず、収穫した葉を細かくちぎり、塩水に浸し
藍色になるまで手でしっかり揉みこみます。

ここまではごく一般的な方法ですが、百々染工房では
揉みこんだ藍の葉っぱを瓶の中に入れ
ハイドロサルファイト(亜ジオン酸ナトリウム)と
消石灰(水酸化カルシウム)を混ぜ込んでいます。

二つの化学物質をしっかり混ぜ込むことで藍が醗酵し
インシゴが還元されて、水溶性の染液ができあがります。

でも、このままだと染液はまだドロドロ。

とてもストールを染めることはできないため、漉し布を使って
葉を除いた液だけを抽出していきます。

温度管理も重要です。

藍の染液は冷えると水に溶けないので
染液はいつも温かい状態にしておきます。

さあ、いよいよ、ストールを浸します。

意外かもしれませんが藍の染液は写真の通り黄色です。
そして、この染液に浸したストールは、染液と同じ黄色になります。
その黄色に染まったストールを大きく広げて
空気に触れさせることで藍が酸化し、色が変化していくのです。

その色の移り変わりはとても美しく、自然の神秘を感じさせてくれます。

ストールに色が入ったら、次は水洗い。

百々染工房では、すべり台のような藍染め専用の台にストールを乗せて
上から桶でバッシャーンと水を流していきます。

冷たい水に何度も晒すことで、どんどん鮮やかな藍色を見せてくれます。

そうして染め上げた、百々染ストール。

自然の力や、藍の力強さを感じさせてくれる
“ジャパンブルー“に仕上がりました。

百々染工房にある藍の瓶は、大小合わせて5つ。
採集時期に分けて保存しています。

採れた年によって、絶妙に違う藍の色。
自分たちで育てあげた藍に思いを馳せて
じっくり、ゆっくりと染めています。

藍は、気候や気温によっても色合いが変わってくるので
同じ色のストールはひとつとしてありません。

染め上がるまで、とても楽しみです。

日本に古くから伝わる、藍染め。

全国各地、多種多様な方法で染めが行われているので
それぞれの違った藍色の表情が楽しめます。

ですので、同じ藍染めでも百々染工房で仕上がるストールの藍色は
ここでしか作れないオリジナル。世界にたったひとつだけの藍色です。

種から藍を育て、丹念に染め上げる、百々染の藍色のストール。

ぜひ手に取って、お気に入りの藍を探してみてはいかがでしょうか。

(文/やじま)

夏の暑さに負けないルドベキア Vol.72

みなさんは、「ルドベキア」という花
知っていますか?

 
ルドベキアは、北アメリカ原産の草花で
日本に来たのは明治時代中旬。

主に切り花として利用されていました。

オレンジ色の花もあれば、鮮やかな黄色をした花も。
小輪、大輪、一重咲き、八重咲きと
花の姿はバラエティーに富んでいます。

 このルドベキアの特徴は、暑さに負けない強さ。

岐阜はこの夏、毎日のように36℃を超える真夏日が続き
39℃や40℃になる日もありました。

植物が弱ってしまうような真夏の炎天下でも
ルドベキアは花を咲かせます。

鮮やかな黄花が満開になる様子は
見ているだけで元気が湧いてきます。

 工房にやってきたルドベキアは
工房で働くスタッフの家で育てたもの。

毎日のように、両手いっぱいに届けてくれました。

今回は、はじめて乾燥させてから染液つくりに挑戦しました。
パリパリになるまで、太陽の下で干します。

こちらは、ストールを染める川島さん。

はじめて乾燥させて作ったルドベキアの染液にストールを浸けて
「黄緑色になったよ」と染まり具合を教えてくれました。

新鮮なルドベキアを使ったものは深い緑色でしたが
乾燥させたルドベキアは、淡い黄緑色に。

花の奥深さを感じる2色のストールに仕上がりました。

(文/かに)

涼しい秋の風に、やさしく大切な人思う花 Vol.73

暑かった夏が過ぎ、少しずつ秋の風を感じるようになってきました。
 
季節が移りゆくたびに
巡る季節を連想するものを思い浮かべてしまいますよね。

たとえば、道端で出会うコスモス。

あの可憐な花を見ると「秋だな」と感じるのではないでしょうか?
 
コスモスの原産地はメキシコ。
日本には明治時代にやってきました。

「秋桜」という文字のごとく、秋に咲く花です。

語源は、「美しい」という意味する「KOSMOS」が由来です。
このことから、星が美しく瞬く揃う宇宙が
「COSMOS」と呼ばれており
整然と並ぶこの花も同じ名前で呼ばれるようになりました。

「秋桜」の二文字を見たら
「あきざくら」ではなく
自然と「コスモス」と読んでしまいますよね。

そもそも、なぜこの漢字が
「コスモス」とよばれるようになったのか、ご存じでしょうか?

 

一説には、歌手の山口百恵さんが歌ったさ
だまさしさん作詞作曲の
「秋桜」という歌謡曲が大ヒットしたからだといわれています。

それ以前は「秋桜」は
「あきざくら」と読まれていたそうです。

当初は、晩秋から初冬にかけての暖かく穏やかな晴天である
「小春日和」という曲名にされる予定だったそうです。

そこを「秋桜」とし、「コスモス」と読ませました。

「結婚を直前に控えた娘さんが育ててくれたお母さんを見つめた思い」
を歌われています。
 
さて、前置きが長くなりましたが、本題です。

コスモスは、花びらだけではなく
茎からも色を抽出することができます。

コスモスの茎を使った染液で染めると
穏やかなイエローカラ―のストールになります。


百々染工房では、様々な仲間が関わり
コスモスのストールを作っています。
 
茎を煮出し、煮出した染液にストールを浸けていきます。

一度染めたストールは、もう一度じっくりと色を重ねながら手染めします。

素材と向き合いながら
色を重ねながら手染めしていく。

この工程こそが、百々染がこだわりつづけたい
百々染工房ならではの“手仕事”です。

できあがったストールはとても優しい黄色になりました。
少しこっくりとした色使いが多くなる秋のコーディネートに
優しいアクセントになるストールです。
 
このコスモスのストールを纏って
「秋桜」を聴きながら
コスモス畑で秋のお花見ができたら素敵ですよね。

香りで感じる秋 Vol.74

夏の暑さもやわらぎ、朝晩はすっかり涼しくなってきました。
いよいよ、実りの秋の到来です。

道端を歩いているとどこからか届く
「キンモクセイ」の香り。

この香りはどこか懐かしさを感じさせてくれるような気がします。

キンモクセイの香りが漂う季節になると
「すっかり秋だなぁ」と感じますよね。

キンモクセイはモクセイ科モクセイ属の
常緑性の小高木樹です。

日本では
観賞用として公園や庭先でよく栽培されています。

原産地の中国では「丹桂(たんけい)」や「桂花(けいか)」
という別名で知られており
キンモクセイの花びらは観賞用以外にも
お茶やお酒(白ワイン)、お菓子、漢方薬など
食用や薬用の植物としても親しまれています。

散歩の途中で大きなキンモクセイの木を見つけた山田さん。

分厚い葉っぱをちぎると「ブチッ!」と大きな音がしました。

この音に合わせるように「キンモクセイ!」と口ずさみます。
その一連の作業が、どんどん楽しくなっていった山田さん。
キンモクセイを、バケツにたくさん集めてくれました。

工房に届いたキンモクセイは
きれいな染液が出るように、葉と枝に仕分けます。

枝から葉をちぎる人、そのちぎった葉をさらに細かくする人…。

一人ひとりの得意分野を生かして
仕分けや葉をちぎる作業を進めていきます。

この繊細な作業のおかげで、曇りのない綺麗な染液ができあがるのです。

ちぎった葉を煮出し、キンモクセイの染液を作りました。

この液にシルクストールを入れて
ゆっくり、じっくり、丁寧に染めていきます。

優しい色の染液で、何度も色を重ねたことで
植物由来の色の深みや、あたたかさを感じるストールに仕上がりました。

キンモクセイからたできたストールと一緒に
穏やかな秋の日を過ごしてみてはいかがでしょうか?

(文/かしはら)

秋の紅葉を感じさせる「刈安」の黄色 Vol.75

朝夕の気温もぐっと下がり、秋らしさが感じられる季節になってきました。
そんな時季に採れる、旬の植物があります。

みなさんは「刈安(カリヤス)」という植物を知っていますか。

刈安はイネ科の植物で
ススキと同じように晩夏から初冬にかけて穂をつけます。

見た目はこのようにススキと似ていますが
ススキに比べて穂の数が少なく、少し背丈が低いのが特徴です。

染料を採るグループは、屋外に出向き
穂が出ていない刈安を見つけにいきました。

刈安を見つけ、採ろうとしているのは山田さん。

山田さんの背と比べると、刈安の背丈の小ささがわかります。

季節を感じながら
山田さんは満面の笑みでたくさんの刈安を摘んでくれました。

刈安から抽出した染液は、鮮やかな茶色です。

この茶色の染液に浸したストールは
そのまま落ち着いた色になるかと思いきや
実は時間が経つと鮮やかな黄色に変化していきます。

「ストールをしっかり染液に浸し、手でしっかり押さえる。」

これが、川島さんの染め方です。

ストールを持ち上げて色合いを確認します。
これが、丁寧に染め上げる秘訣です。

「キレイに染まれ~!」と
想いを込めて染め上げ
美しいストールができあがりました。

実は、日本の伝統色には「刈安色」という色があります。
刈安色は、黄色系の色調をあらわす染料として
古来より重宝され、着物文化にもとても縁の深い植物です。

このストールを身にまとって
初秋の気分を味わってみてはどうでしょうか

(文/やじま)

「ウコン」のあふれだすパワー Vol.76

ウコンというと、まず頭に浮かぶのが
飲み会の前に飲む「ウコン入りドリンク」ではないでしょうか。

ウコンに含まれるクルクミンは
胆汁の分泌を促しア
ルコールの分解を早めると言われています。

そんなイメージが強いウコンですが
実はこんなにかわいい花が咲くんですよ。

花言葉は「あなたの姿に酔いしれる」

葉っぱの中に隠れるように咲く幻想的な花の姿から
こう言われるようになったそうです。

百々染農園では、毎年ウコンを栽培しています。

ウコンは、じゃがいものように
ひとつの株からたくさんの実を収穫することができます。

一度にたくさんのウコンを収穫しますが
すぐに全量を染めに使用できないため
百々染工房では、このウコンを乾燥させて
パウダー状にしてから長期保存し
必要なぶんだけを都度使用しています。

まずは収穫してきたウコンをスライスし
しっかりと乾燥させます。

水分を蒸発させてカリカリになったウコンを
ミキサーにかけて、細かい粉末にします。

そのパウダーを使い、煮出した染液からは
ウコンの独特な匂いがしました。

じっと見つめる安藤さん。

ウコンの色にも興味津々のようです。

ウコンで染めたストールは
パッと目をひく鮮やかな黄色になりました。

どの植物にも負けない、力強くて優しい
これからの季節にぴったりの色に染め上がりました。

ウコンで染めたストールからは
なんだかパワーを感じます。

そんなストールを巻いて
寒さの厳しい冬を乗り越えてくださいね。

ちなみに...
百々染農園では、今年もすくすく成長中!来年の収穫が楽しみです。

(文/かに)

百々染の「藍」セレクション
藍染め特集 Vol.77


すっかり寒くなり、冬が近づいてきました。
寒くなると、セーターやコートなど
黒やグレー、ダークブラウンなど
落ち着いた色の服を着ることが多くなりませんか?

そんな時季にぴったりなのが
顔まわりをパッと明るくしてくれる
爽やかなシルクストール。

ファッションがモノトーンになりがちな今だからこそ
夏の青空のような爽やかな藍色を挿し色にして
寒い冬を乗り切ってみるのはいかがでしょうか?

今回は、これまで百々染コラムで紹介した
藍のストールをまとめてご紹介します。

あなたはどの「藍色」がお好みですか?

深くてやさしい、藍をもとめて vol.2


小さな種からアイを育てよう(前編)vol.19

かわらずそこにあるもの vol.55

(文/やじま)

百々染の「黄色」セレクション Vol.78

だんだんと日が短くなり、冬の訪れを感じさせてくれます。

一年で最も昼が短い日、冬至。
冬至には柚子が欠かせませんね。
フレッシュで明るい黄色が目に浮かびます。

工房では、柚子の黄色はもちろん
たんぽぽや菜の花など、季節ごとに顔を出す
様々な「黄色」のストールを取り揃えています。

それぞれ、季節ごとに素敵なストーリーが隠れています。

ぜひ覗いてみて下さい。

菜の花と一緒に春を届けよう Vol.39


なんでも屋のゆず Vol.57


小さな花からパワーをもらって Vol.62

(文/やじま)

百々染の「ピンク色」セレクション Vol.79

冬が近づき段々と寒くなってきましたね。

晩秋から冬にかけて花を咲かせるさざんかや
つばきの染液から作るストールは
淡く可愛らしいピンク色に仕上がっています。

また、夏の風物詩であるあさがおから作る
ピンク色もさざんかやつばきと違った色合いです。

冬のコーディネートに取り入れてみてはいかがでしょうか。

「控えめな優しさ」と「誇り」の色 Vol.7

冬の中で咲く華やかなサザンカ Vol.31

あさがお ~ひと粒の種から大輪に向かって~

(文/やじま)

かけがえのないご縁をつないで~月桂樹~ Vol.80

「月桂樹の木が台風で倒れてしまったので、ぜひ染めに使って下さい!」
そんなお声が工房に届いたのは、9月下旬のことでした。

百々染の工房では
自分たちで栽培した植物を染料にすることもありますが
地域の方や知り合いの方からの
こうしたお声がきっかけで染めをする機会もたくさんあります。

改めて「たくさんのつながりにいつも支えてもらっているんだなあ」と
実感する瞬間です。

大きく、立派に育った月桂樹。

大切な月桂樹は、葉っぱも枝もひとつ残らず
大切に使わせていただくことにしました。

月桂樹の花言葉は、「栄光」「勝利」「栄誉」
古代ギリシャでは、月桂樹の小枝で作った冠を
勝者や英雄に授け讃える習慣があり
それが花言葉の由来になっています。

現代でも、オリンピックやスポーツ大会で
優秀な成績をおさめた選手たちに
月桂樹の冠を授ける場面も。

とてもおめでたくて、よく知られている植物です。

いい染液が出来るよう
葉っぱをちぎっていく「ちぎる」チーム。

枝からブチッブチッと豪快にちぎっていく人もいれば
細かくちぎることが得意で
集中して葉っぱを細かくしてくれる人も。

それぞれの得意なやり方で
次々と枝と葉っぱを分け、ちぎっていきます。

葉っぱをちぎっていくと
さらに月桂樹の香りが増します。

作業が進むにつれて
工房全体がさわやかな香りに包まれました。

これまで、百々染工房では
月桂樹の葉しか染めたことがありませんでしたが
今回は枝も葉もたくさんいただいたので
初めて枝を煮出して染液を作りました。

月桂樹の枝からは、優しいピンク色の染液ができあがり
ストールも穏やかなピンク色に染めあがりました。

今回のご縁で、たくさん月桂樹をいただいたおかげで
月桂樹の葉と枝の両方、異なる色のストールができあがりました。

月桂樹の枝から煮出した染液で染めることで
こんなに優しい色味に仕上がるとは
工房でも新たな発見でした。

こうして、地域の方々とのご縁をつないでいる「百々染」
この想いが、使う人にまで届くといいなと考えながら
日々丁寧に仕事を重ねています。

月桂樹の葉と枝から、冬から春にかけてぴったりな
優しい色合いに仕上がった黄色とピンク色のストールたち。

ぜひ手に取ってみてくださいね。

(文/かしはら)

この記事を書いた人

百々染だより Vol.71~Vol.80 | 思いを育み、役割を作る

いぶき福祉会

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