百々染だより Vol.51~Vol.60 | 思いを育み、役割を作るえんがわのプロジェクト

百々染だより Vol.51~Vol.60

執筆:

いぶきからのコメント

色や質感で選ぶのもいいけれど、染料のもととなった植物や、染められた季節、その日の天気や、作り手の表情からも選んでほしい。
同じものは存在しない百々染だからこそ、百々染をとりまくさまざまな「ことがら」や「人柄」から、あなただけの特別な一枚を見つけてください。

百々染のシゴト ~5分を積み重ねて~ Vol.51

毎日、5分という短い時間
染めを取り組んでいる人がいます。

それは、写真に写っている河出さんです。

河出さんは、染料採りと葉っぱちぎりを
器用にこなしてくれますが
ストールの染め手でもあるのです。

朝、いぶきに出勤するとすぐに
染めの作業に移ります。

短期集中型で
毎日5分という短い時間でストールを染めています。

そして、コツコツと、積み重ねています。

写真は袋に染液とストールを入れているところですが
染液がこぼれないよう丁寧に作業をしています。

袋に入れたらそれを揉んで
色ムラがでないようストールに馴染ませます。

ここが色を入れていくポイントでもあります。

袋のプニプニした感触が好きな河出さんは
この時とても素敵な笑顔をみせてくれます。

袋からストールを取りだした後は
タオルを使ってストールを脱水し
干す作業に移ります。

ストールが乾いた時にシワにならないよう
上から下まで丁寧に伸ばしています。

そして、ストールを染め終えると
染料採りに行くために車に乗ります。

なんとこの作業が終わるまで5分。
集中して取り組む5分を
色がしっかり入るまで何度も同じ作業を毎日繰り返していきます。

河出さんが作るストールは1カ月に1枚しか完成しない
とてもこだわりがあるストールです。

ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

(文/やじま)

季節とかさねて Vol.52

8月頃に白い花を咲かせていたくさぎ。

10月に入ってから、額が緑色から赤色になり
熟した青色の実をあちこちで見かけるようになりました。

今年も貴重なくさぎをたくさん収穫できるように
「採るチーム」毎日でかけています。

今まで「秋の訪れを告げるくさぎの実」
「あおいろのバトン」と
2度にわたってくさぎの紹介をしてきました。

今回は、出来上がったストールに
くさぎを重ねる、重ね染めを紹介します。

草木染めで青色をだしてくれる貴重なくさぎ。

1年を通して染めに使えるように
いまの時期にめいっぱい収穫して冷凍保存しています。

そして、使う時に使う分だけ大切に。

百々染の緑色のストールのほとんどは
黄色で出来上がったストールにくさぎを重ねて染め上げています。

緑色、といってもさまざま。

上から

菜の花とくさぎ
ねむの木とくさぎ
オリーブの葉とくさぎ

くさぎで重ね染めする時のポイントは
季節の植物に重ねること。

春は菜の花、夏はねむの木
秋はコスモス、冬はさざんか・・など

染め手たちも、くさぎの重ね染めがお気に入り。

じわじわと色が変わっていく様子を
見つめながら染めたり
端っこから順番に染めたり
染め方はそれぞれ。

重ねるくさぎは同じでも
季節の植物によって出来上がりが変わってきます。

2つを重ねることで出来上がるストールは
とても深みがあって柔らかな印象を与えてくれます。

あなたの好きな季節の植物と
くさぎを重ねたストールを見つけてみてくださいね。

(文/かに)

百々染のシゴト ~感じる色彩~ Vol.53

たくさんの表情をもつ百々染のストールたち。

ストールを染めるときの揺らし方や力加減
その日の天気や気温など
例え同じ染液であってもいろいろな条件が重なって
染め上がったときのストールの表情は
その時々に違いを見せてくれます。

写真に写っている川島さんは
その違いを嬉しそうに伝えてくれます。

いつも黙々と真剣な表情で染めに向かい
染め上がる色を楽しみにしている川島さんのコトをお伝えします。


出勤するとすぐに席につき
誰よりも早く作業に取りかかります。

まずは作業で使うタオルたたみです。

きっちり揃えてたたむところに川島さんの丁寧さがうかがえます。

たたみ終わるとすぐに染めにとりかかり
スタッフが「今日は何の染液だったかなぁ?」と確認すると
「〇〇で染める!」と、すかさず口にします。

染め作業が始まると緩やかな顔つきは一変します。

真剣なまなざしをストールに送り
色が入るように染液の入ったタライの中で
ストールをもみ込んでいきます。

作業が終わる時間までの集中力は誰にも負けておらず
最後まで気持ちを込めてやりきります。

そんな川島さんの表情がゆるむときがあります。

それは、染まっていく色が納得いく色であったり
染め上がりが思い描いた色であったり。
そして、違う表情をした色に出会ったときであったりと。

「今日はどんな色になった?」と聞くと、

赤色に近いピンク(かりんの枝)
黄色っぽいオレンジ(玉ねぎ)
抹茶のような緑色(赤じそ)などなど。

その日ごとの細かな色の違いを
自信を持って教えてくれます。

言葉をつむぎながら、にやり…と。

そしてその色のことをみんなに伝えてくれます。
「いい色になったね。」「ほんとだね。」と
周りから声をかけられ注目を浴びると
また川島さんの頬が緩みます。

その風景が工房の中を暖かくしてくれます。

ストール全体を染液にしっかりと浸すこと
よく色が入るようにもみ込むこと
ストールを上げて色を確認しながら染めあげていくことなど
川島さんの丁寧な染め方が絶妙な色合いを作り出していきます。

川島さんが丁寧に一枚一枚染めたストール
一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

(文/かわなみ)

メキシカンセージ 一人二役の染料 Vol.54

寒い時期になり、道端の木々は紅葉を終え
少し景観が寂しく感じる季節になりました。

そんな季節に根強く花を咲かせる植物があります。

メキシカンセージという植物で
元々は中央アメリカ、メキシコに分布しています。

日本には明治時代に渡来し
アメジストセージ、メキシカンブッシュセージ
メキシカンセージの名前で流通していました。

また、花の香りもハーブ系でとてもいい香りがします。

メキシカンセージの花期は
8月下旬~11月中旬で、唇形の花を多数咲かせます。

この花は道端には咲いておらず
畑で育てる必要があります。

毎年この時期に
メキシカンセージでストールを作成します。

工房の畑でも育てていますが
日当たりや適温、安定した水分供給など
きれいな花を咲かせるためには
整った環境で丁寧に育てる必要あり
一つのストールを作るには、まだまだ足りません。

私たちが住む地域の方との
「ご縁」や「つながり」から
メキシカンセージを頂き、使用しています。

メキシカンセージは
花と葉っぱからそれぞれ2種類の染液を作ることができます。

そのため花と葉っぱを
仕分けて染料としていきます。

別々にしていくことで
2つの染液が生まれます。


花からはピンクに近い赤色の染液
葉っぱからは淡い黄色の染液ができます。

出来上がった2本のストールは
とても鮮やかな色合いをしています。

1つの植物で2つの違った色を出してくれる大切な染料で
まさに一人二役の活躍。

今年も皆さんに頂いた
ご縁を紡いだストールが仕上がりました。

(文/やじま)

かわらずそこにあるもの Vol.55

これまで、百々染では

「深くてやさしい、藍をもとめて〈Vol.2〉」

「小さな種からアイを育てよう〈Vol.19&20〉」

「冬の藍染め〈Vol.36〉」

と、3回にわたって藍染めをご紹介してきました。

これまでの藍染めと何が違うのかと言いますと
染液を作る際の葉の状態が違います。

畑で育てた葉を採ってからすぐに染液を作る生葉。
採ってから吊るし
時間をかけて乾燥させてから染液を作る乾燥葉。
大きく葉を育てるところまでは同じですが
干す工程が大きな違いです。

写真のように、束ねて吊るし
パリパリになるまで乾燥させます。

茎と葉脈(葉っぱの筋)などの不純物を取り除き
ミキサーにかけて細かくします。

お茶パックに入れ、煮出していきます。


出来上がった染液は写真のように黄色です。

染める工程は生葉と同じで
袋に入れたストールと染液を揺らして染めます。

ストールを袋から出し
空気に触れるとみるみるうちに色が変わっていきます。

乾燥葉で染めたストールが染め上がりました。

葉が乾燥するとパリパリになり
色も変わり
はたして藍染めができるのか心配になりましたが
出来上がったストールは
これまでにない鮮やかな仕上がり。

つくり手みんなが納得のいくストールに染まり
百々染の藍染めが一歩進みました。

乾燥して姿は変わっても
「かわらずそこにあるもの」

藍が染めようとする力は
なにひとつ変わってはいませんでした。

ぜひ、この1枚を身につけて藍の力を感じてみて下さい。

(文/たけごし)

榊の実をストールにつなぐ Vol.56

1本の百々染のストールができるまで
たくさんの人とつながっています。

染めに欠かせない染料となる植物を育ててくれる方や
染めに使ってみてと持ってきてくれる方たちにも支えてもらっています。

そのつながりの大切さをいつも感じています。

トップ写真にある植物は「榊(さかき)」といい
とても貴重な染料でなかなか手に入りづらい染料です。

そんな榊の実が
今年も百々染工房にやってきました。

持ってきてくれた人は
百々染を6年ほど前から支えてくださっている野田先生。

野田先生は大学の先生を退職した後
ふいに生まれたつながりから
工房に週1回来てくださり品質を上げるためのアドバイスや
新しい試みを一緒に取り組んでくれています。

その野田先生の知人の神主さんから
「榊の実は、白い足袋に実の色が付くと落ちなかったり
手に付着して洗っても中々色がとれない」という話を聞いて
この実ならよく染まるいいストールができるのではと
袋いっぱいに持ってきてくれました。

榊は、神事に用いられるため神社境内で見かけることが多く
11月から12月にかけて果実が熟して黒色になります。

1粒ずつ大切にちぎったたくさんの黒い実から
優しいピンク色の染液が仕上がりました。

今シーズンのストールはまだ1本しか出来上がっていません。
神という漢字が入った榊。
なんだかめでたい感じがしますね。

ぜひ新しい年の始まりに手に取ってみてはいかがでしょうか?

(文/かしはら)

なんでも屋のゆず Vol.57

雪が降る季節、寒い日が続きます。

そんな時、ゆずを刻んで鍋に入れたり
お風呂に入れてゆず湯にしたり
ゆず茶として飲んだり...
寒い時期に心も体も温めてくれます。

生活のいろんな場面で触れ合う機会も多く
「ゆず」は「なんでも屋」と言えるかもしれませんね。

冬の植物や果実は
次の春に備えるための休憩期間となることが多いですが
ミカン科のゆずは冬に入る11月頃から旬を迎えます。

今年もゆずが工房にやってきました。

ゆずは丸ごと煮込むと
きれいな染液ができないため
皮をむく作業が必要です。

皮が固いゆずは
力を入れ過ぎると実がつぶれてしまうため
慎重に作業します。

写真に写っている
ちぎり手である木谷さんの表情からも
集中している様子が伺えます。

皮と実に分けられたゆずを
30分程じっくり煮込むことで
クリーミーな染液が出来上がりました。

ゆずの爽やかな香りが工房いっぱいに広がり
工房のみんなの気持ちを和やかにしてくれます。

ムラなく全体に色が入るようにするには
端っこから少しずつ
ストールを広げながら揺らしながら...

難しい作業ですが
安藤さんは手元をよく見てゆっくり染めていきます。

今回、「なんでも屋」のゆずが工房にきて
ストールに変身しました。

ゆずからできた淡く優しいストールを身につけると
きっと春が待ち遠しくなりますよ。

(文/やじま)

百々染のシゴト ~人をつなげて~ Vol.58

岩本さんのはじける満開の笑顔。

楽しいよ♪一緒にやろう♪
といつも近くにいるスタッフを呼んでくれます。

袋の中に入っている
染液のあたたかくて柔らかい感触の心地良さ

「1、2、3」とリズムに合わせて一緒に袋をたたく楽しさ

思わず「ウフフ」と笑顔になります。

まわりのみんなもつられて笑みがこぼれて
工房がパッと明るくなっていきます。

これが岩本さんの力なのです。

やさしく染め上げてくれるからこそ
あたたかみのあるストールが生まれたり

楽しそうに染め上げてくれるからこそ
元気な色のストールが生まれたりと。

岩本さんが染めたストールには
思いまで映ったかのような仕上がりを見せてくれます。

先日、カフェ・ド・ギャラリーアダチ
「しぜんのいろ、いろいろ展」が開催され
彩り鮮やかなストールたちが展示されました。

そして、岩本さんが染めたストールを見ようと多くの方が来場されました。

百々染が大切にしたいこと、していることは「つながり」

岩本さんは
そのつながりを作ってくれる大切なつくり手の一人です。

ギャラリーに来場された方とのつながりは
きっと学生時代からのつながりであったり
SNSでのつながりであったりと…。

このつながる力は
きっと満開の彩那スマイルあってのことだと思います。

私たちがストールと一緒に届けたいストーリー。

それは、つくり手たちの笑顔
染めているその「時」そのもの。

笑顔いっぱいのストールお届けします。

(文/かわなみ)

仲間入りのNEWカラー Vol.59

梅干しやしそジュース。
1度は食べたことのある赤じその紹介をします。

しその種類は大きく分けると
青じそと赤じそに分けられます。

古くから日本に自生する和風ハーブで
食欲がそそられる独特な匂いが特徴です。

成長に応じて葉、芽、花穂
実の全ての部分がつかえる
利用価値の高い食材です。

またミネラルやビタミンが豊富で
色々な薬効が認められて
最近では花粉症などの
アレルギーにも効果があるといわれて注目されています。

春にまいた種が夏になる頃には
背が高くなりたくさんの葉っぱがつきました。

1枚ずつちぎっていくのは吉迫さん。

赤じそを束で持って
自分の気に入ったサイズの葉っぱからちぎっていきます。

今までは
ちぎった赤じそを酢につけてピンクの染液をつくり
鮮やかな色のストールを染めあげてきました。

しかしふと
「このまま煮出して染めたら、どんな色のストールになるのだろう?」
と感じ、楽しみな気持ちと不安な気持ちで染め上げました。

水洗いをしながら川島さんが
「きみどり色になったよ」
と嬉しそうに教えてくれました。

赤じそならではの落ち着いたシックな仕上がりに
ピンクにも緑にも染めれるのだと面白い発見でした。

これからも
どうなるのかな?やってみよう!
の気持ち大切にしていきたいです。

今回新しく仲間入りしたNEWカラー。
ぜひ1番に手に取ってみてくださいね。

(文/かに)

こだわり続けたいこと Vol.60

私たちが大切にしていること
こだわっていることは自然ならではの色合い
染料をいただいたり
ご協力して下さるたくさんの人とのつながり…
であったりなどたくさんあります。

その中でストールの生地と媒染についてご紹介します。

まずシルクへのこだわりはその質感にあります。

シルクは軽くてなめらかなので肌にやさしく
非常に肌ざわりが良いのが特徴です。

見た目の光沢からくる高級感だけでなく
吸湿性・保湿性・放射性に優れており
夏は汗をかいてもサラッと
冬はあたたかく使用することができるので
私たちはシルクを選択しています。

また動物性の繊維を使うことで
濃染処理を必要としていません。

ストールをまとった時のおしゃれさと
高級感がでるのはシルク生地ならではです。

この真っ白な生地が
様々な色に変化していく様子は
いつみても目を見張ります。

そして次に草木染めに欠かせない「媒染」という工程。

実は染液にストールを浸しただけでは
色が繊維にしっかりと定着していない状態なので
繊維と色を結び付ける媒染という作業が必要になります。

媒染には鉄や銅など金属の種類がありますが
その中でも私たちは
ミョウバンを使用したアルミ媒染をしています。

ミョウバンは漬物の色落ちを防ぐ働き
煮物の煮崩れを防ぐ働きなど料理にも使われます。

そのため染め手はもちろん
ストールを使ってもらう方にも優しいことから
ミョウバンを選んでいます。

適温で溶かしたミョウバンにストールを浸すことで
より鮮やかな色に染め上がり
そして色を生地により定着させることで
色止め効果につながります。

媒染のあとは…

どんな色になるかな?
こんな色になったらいいな!
とわくわくしながら
真っ白なストールに薄く色を入れていきます。

薄く色を入れたあと媒染をして
色を定着させてから再び染液を入れ
色むらにならないように少しづつ色を重ねます。

この媒染→染めの工程を何度もくり返しながら
染め上げていきます。

今後も、シルクとアルミ媒染にはこだわり続けようと思います。

その季節に取れる植物から抽出した色合いを
何度も重ねていくストールたち。

この春にできあがったばかりのストールを
ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?

(文/かしはら)

この記事を書いた人

百々染だより Vol.51~Vol.60 | 思いを育み、役割を作る

いぶき福祉会

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