いぶき福祉会の藤澤亮太さんえんがわピープルの物語

対話と関係づくりを、自然体で ─いぶきのグッド・ストーリー⑬ 藤澤亮太 編<前半>

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いぶきからのコメント

こんにちは、いぶき福祉会の和田です。いぶきの現場では、仲間と職員の関わりの中から、毎日のように小さな“グッド・ストーリー”が生まれています。その一つひとつを、もっと多くの方に知っていただきたい――そんな思いから、このコラムを続けています。
毎回、現場で働くスタッフをゲストに迎え、いぶきの今をダイアログ形式でお届けしています。スタッフの情熱や、人と人がかかわる現場のリアル、そして“いぶきらしさ”が伝われば嬉しいです。
今回のゲストは、協働責任者のひとりで、北部・西部にまたがるグループホーム全体を担当する藤澤亮太さんです。

正しいことを強調せず、一人ひとりの考えが発揮できるように

和田: 藤澤さん(以下、亮太さん)と、話をしてみたかったんですよ。いつも8人の協働責任者同士として連携して仕事をしてはいますが、あらためてこうして二人で話すとどうですか?(笑)

藤澤: そうですね、照れますね(苦笑)。

和田: 先日までは岐阜市北部にある事業所、通称「北部」で、日中の活動を担当されていました。例えばジャムづくり草木染の百々染や、前回のコラムでお話した”にじの部屋”などを統括する役割でした。

藤澤: はい。それで2026年4月からは、西部と北部で運営しているグループホームを統括する役割に変わりました。今までは地域ごとに運営していたのですが、地域の垣根を超えて連携していくようにしたいと思っています。近隣地域とのつながりを広げるさまざまな活動にも、引き続き携わります。

和田: 亮太さんと言えば、障害のある仲間たちからも職員からも、ひっきりなしに声をかけられる存在なんですよね。今日は、亮太さんが日々どんなことを大切にしながら仕事をしているのか、聞かせてもらえますか?

藤澤: うーん、考えたことはあまりなかったですが、そうですね…、自然体でやっているっていうのが一番ですかね。あまりかしこまらず、常に上下をつくらずに、平らな関係でいようってことを意識していますね。協働責任者になってからは特に。現場の人もパートさんもみんな自分に喋りかけてくれるのは、そういうところがあるのかな、と思いました。

和田: 「上下を出さない」というのは、具体的にはどういうことですか?

藤澤: 自分は、「あの人がおってよかったな」とか、「あの人に話しかけるだけでちょっと安心する」とか、そういうふうに思ってもらえる存在でありたい。いいことを言おうとか、こうするべきとか、そういうことがあまりないんです。正しいことを言える人じゃなくて、ありがたい人になりたいなと思っているんですよね。

和田: なるほど。あまりないといいつつも、信念みたいなものがありそうですね?

藤澤: それはありますよ、もちろん。障害のある仲間たちをお預かりしているわけですから、「あかんことはあかん」っていいます。ただ、そこまでの工程のやり方については、そこまで気にしないというのでしょうか。一線だけは越えない、でもその手前は柔軟に、という感じですね。

和田: 正しいことを掲げすぎると、みんな何も言えなくなる、ということですね。

藤澤: そう、そうなんです。自分が何かを掲げすぎてしまうと、「あ、そうなんや」ってなって、結局一人ひとりが発言できなくなっちゃう。スタッフたちはみんな、それぞれいい考えを持っているので、それをしっかりお互いに言えるようにするためにも、自分があまり「こうあるべき」ということを、先に出しすぎない方がいいと思っているんです。

和田: いぶきのフィロソフィーに「ことばと対話を大切にすること」「多様な人との関係づくりを楽しむこと」という項目がありますが、亮太さんが話してくれたことは、まさにそうしたことを体現しているんだなと思いました。意識してやっているというより、もうそれが自然体になっていますね。

いぶき福祉会

学生時代は挨拶もしなかった? 変わるきっかけは仕事だった

和田: しかし、ちょっと意外な話も聞いたんですよ。学生時代は挨拶もしないような学生だったって、本当ですか?

藤澤: それ、誰から聞いたのかな(笑)。そうそう、学生時代は本当に態度が悪かったんですよ。サッカーをやっていたんですが、もうオラオラって感じでしたね(笑)。

和田: 今の亮太さんからは想像がつかないですね?

藤澤: 学生時代に老人ホームに実習に行ったときも、実習記録をぜんぜん書かなくて。注意されても、「最後に書けばいいじゃん」ってぶっきらぼうにしていたんです。最終日も「はい、どうもありがとうございました」とだけ言い残して早めに帰ったら、後から「あの子、愛想ない子やったね」って言われたと聞きました。今こうやって話しているのが信じられないかもしれないですけど(笑)。

和田: だとすると、今のコミュニケーション上手な亮太さんは、何がきっかけでつくられたんですか?

藤澤:  自分でもよくわからないんですけど、なんでやろうな。仕事してからですかね。うん、そうかもしれない。

和田: ほう。

藤澤: 以前はそんな人だったのですが、仕事を始めてから「いい仕事しているね」と言っていただける機会が増えました。自分は褒められると余計に頑張ろうと思っちゃうタイプなので(笑)。そう言われると、だったらそれ以上やらなきゃという気になっちゃうんですよね。そういうことの積み重ねだったかな、とは思います。

思いがけない長期休職で気づいたこと:「自分ありき」を超えていく

和田: 亮太さんは、苦しい場面でもあまり苦しそうに見えないんですよね。でも実際、大変なことはありますよね?

藤澤: ありますよ、もちろん。ただ、あんまり大げさに捉えないほうなんですね。考えてもしょうがないことは考えないし、考えるところは考えてすぐ動くというような感覚です。ただ、体には出ちゃったのだなと思いました。病気を経験したことは大きな発見になりました。

和田: そういう時期がありましたね。

藤澤: 仕事人生で初めて長期のお休みをいただきました。治療に1年間ぐらいかかりましたかね。あのとき、復帰してみたら、自分がいないあいだにサービス管理責任者の皆さんたちがお互いに連携して、物事を自分たちで決めて動いていた。それまでは皆さんが何でも相談に来る感じでした。「自分ありき」の状況だったのが、そうではなくなっていたんですよね。それを見て、いい意味でよかったなと思ったんです。「気軽に相談できる人」でありすぎたのが、よくなかったかもしれないなと。自分がいなくなることで、チームが育つということもあるんですね。

和田: その経験が、今の仕事のやり方に影響していますか?

藤澤: 影響していると思います。入社当初、グループホームを担当していたころは「自分が一番大変だ」って思っていたふしがありました。でも職場をしばらく離れてみて、「いや、大変さはみんなそれぞれや」って気づくことができました。特に自分が病気をしたことも関係しますね。だから今は、「うちが大変」とか「あっちはいいな」とか、他の仕事と比べないようにしています。いぶき福祉会は、活動が多岐にわたっているので、実際のところ比べようがない。みんなもそう考えたほうがいいのになと。「おたがいさまの関係を尊重すること、寛容さを忘れないこと」、これらはフィロソフィーにある言葉ですが、やっぱりおたがいさまでいようって、より思えるようになりましたね。

サッカーで身についた、「自由に動く」チームの感覚

和田: 学生時代にはサッカーをやっていたそうですが、サッカーって、頭を使うスポーツですよね。

藤澤: そうなんですよ。チャラチャラしているような感じがするかもしれないけど(笑)、実は全然違うんですよ。サッカーって、自由じゃないですか。野球は役割が固定されて決まっていますが、サッカーはディフェンダーだって別に関係なく上がっていいし、何でもできるんです。その分、頭を使うんですよね。ゴールが入ったとか攻めてるとか、プレイヤーは局面ごとに状況を考えながら動いているんですよね。

和田: 今のチームのつくり方に通じるものがありますね。役割は決まっていても、状況によってみんなが動き方を変えながら、目的に向かっていく。「こうあるべき」じゃなくて「今どうするか」をそれぞれが考えて、チームで動きますよね。

藤澤:  言われてみるとそうかもしれないですね。仲間と一緒にFC岐阜を応援しに行ったときも思ったんですが、サッカーってとにかくわかりやすい。今は攻めている、守っているのが見えやすくて。そのシンプルさが好きですね。チームで動くっていうのは、そういうことかなと。

いぶき福祉会のみんなでFC岐阜を観戦
和田:
 「信頼し、創造しつづけること」ということが、フィロソフィーにもあります。亮太さんのチームへの向き合い方からそれを思いました。一人でコントロールしようとするんじゃなくて、お互いを信頼して、その場その場でいちばんいいかたちをみんなでつくっていく。サッカーを10年やっていたということでしたが、体に染み込んだ軽やかな感覚が、知らず知らずのうちに仕事のスタイルになっているのかもしれませんね。

後半へ続く…

いぶき福祉会 和田義之さん、藤澤亮太さん



いぶきのグッド・ストーリー! 

竹腰龍太 編  前半:仲間を大事に、自ら考え、柔軟に支援できる現場をつくる
竹腰龍太 編  後半:多様性が許容され、障害福祉の理解がもっと拡がる社会をつくる
藤井美和 編  前半:障害の重い仲間の「暮らし」を支える楽しさと大切さ
藤井美和 編  後半:助けてもらうだけではない、貢献感覚を持てる社会を
小田由生 編:音楽という共通の話題を媒介に、障害のある仲間とよい関係がはじまった 
小田由生 編:できない理由より、実現にむけて行動するチームが、仲間や地域の可能性をひらく
二村菜穂子 編:隣人同士が声をかけあい、ケアしあうからはじまること
二村菜穂子 編:お互い様の心で、誰もが障害福祉に参加できる未来
笠井公子 編:障害のある仲間と取り組む岐阜市のペットボトル・リサイクル
笠井公子 編:地域の皆さんとの関係を結び、支えられてこそ今がある
⑪加納優汰 編:「できる」が生まれる場所
⑫加納優汰 編:私はこうして福祉で変わった
⑬藤澤亮太 編:対話と関係づくりを、自然体で(現在の記事)



【スタッフ募集中です!】———–★★★

ここに集う一人ひとりがかけがえのない存在。
障害のある仲間の活動と暮らしを支え、
いろいろな方と協働する地域にひらかれた場所です。
そんないぶきの未来を一緒につくるスタッフを
募集しています。

コラム:スタッフ・ダイアログ 「いぶきで働くということ」
採用情報:詳細はこちら(ibuki-komado.com)
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この記事を書いた人

いぶき福祉会 和田善行

和田善行

わだ よしゆき
社会福祉法人いぶき福祉会 法人本部 事務長
協働責任者/社会福祉士/インターミディエイター

大学時代には、筑波大学で数学を専攻すると同時に、ボランティア・サークルを新設。障害のある方々の生活課題にまなざしを向けて、プロアクティブに活動していました。卒業後も活動を継続しながら、神奈川県丹沢主脈の山頂にある山小屋にて小屋番を経験。その後、高齢福祉の分野を経て、再び障害福祉に立ち戻るため、岐阜に移住し、社会福祉法人いぶき福祉会に所属。現在、協働責任者として、団体内外との協働を促進し、クリエイティブ・ワークチームの形成に取り組んでいます。さらに、人間回復と再生につとめながら、“競争のない、多様性が許容される社会”の実現を目指しています。

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