9月18日は“「医療的ケア児・者」支援の日” | いのちと生活を支えるえんがわピープルの物語

9月18日は“「医療的ケア児・者」支援の日”

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いぶきからのコメント

世界早産児デーのことも、寺澤さんに初めて教えていただきました。
寺澤さんはいつも、「これはみんなに知ってもらって、みんなで考えていきたいことなんだ」ということを、ご自身の言葉で、周りの人たちにためらいなく、誠実に、楽しそうに伝えてくださります。できることを一緒にやりたくなる方です。いぶきの仲間たちにも重症心身障害や、医療的ケアの方はおられます。
寺澤先生、とても心強いです!ありがとうございます。

2021年9月18日。
この日、日本の法律にはじめて「医療的ケア児」という言葉が登場した法律が施行されました。
医療的ケアとは、日常の生活にさまざまな医療のサポートを必要とする人たちへの特別なケアのことを言います。
たとえば、呼吸がうまくできない人の喉に手術により穴をあけて気管切開チューブと言われるチューブや人工呼吸器を使って呼吸をサポートすること、自分の力だけでは十分な栄養をとることができない人の鼻から胃まで細い管を入れて栄養を投与したり胃に穴をあけて胃瘻と言われる器具を使って栄養を投与したりすること、自分の力で排尿できない人の尿道に定期的に細い管を入れて尿を出すことなどが挙げられます。
このような行為は本来、医師か医師の指示を受けた看護師しか行ってはいけない手技、すなわち医療行為・医療ケアとされていました。
ところがこの30年ほどの間に医療や看護や福祉が急激に発達し、先に挙げたようなケアが必要であっても自宅や施設に帰ることができるようになる人が増加しました。
そうすると、このような行為を医師や看護師以外の人が担う必要が出てきたのですが、その担い手はすべて、医療の専門家ではない家族に委ねられることになってしまいました。
本来医療行為・医療ケアであったものを、非医療者が行えるものであるという行為にみなすための言葉、それが「医療的ケア」という「的」が入った言葉になりました。

暗黙の了解のような形で非医療者である家族に医行為をお願いする状況が続いたのですが、さまざまな問題があったことも事実でした。
家族としての日常生活の中に医行為がのしかかってくることで、お母さんとして、お父さんとしての役割以上のことが医療的ケアを必要とする子どもの家族に負担を強いることになったのです。
そのような家族の負担を解消しようとするにも、さまざまな観点から整備された法律同士の横の繋がりが途切れている状況において、柔軟な考え方がとりにくかったり理想と現実の間に大きなギャップがあったという実情がありました。
そのような状況を少しでも改善していくこと、医療的ケア児の日常生活・社会生活を社会全体で支援し、個々の医療的ケア児の状況に応じ切れ目なく支援が行われることを理念として、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が制定され、施行されるに至ったのです。

しかし法律ができたからといって、当事者以外に理解が広がったようには、残念ながら感じられません。
多くの人に医療的ケア児のことを知ってもらうことや、医療的ケア児を支える人たちのことを知ってもらうことができないだろうか?と考えていたさなかに、岡山大学医歯薬学総合研究科小児急性疾患学講座の鷲尾洋介先生や岡山市保健所の中村和恵先生らから同じような思いをご相談されました。
そして一つの旗印として記念日登録するのが良いのではないか、と思いつき、2024年1月に、9月18日を“「医療的ケア児・者」支援の日”として、僕が勝手に登録しました。
この記念日の名称に「者」と入れたのは、医療的ケア児の方々の課題は成人期になるとより深い課題となることから、将来この法律が「医療的ケア児・者」を包括したものに深化してほしい、という願いを込めたためです。


記念日となったからといって何かが変わるわけではありません。
ですが、少しでも多くの人に「医療的ケア」という言葉のことを知ってもらい、医療的ケアとともに生きている多くの人達のことを知ってもらい、医療的ケアを必要とする人を支える家族や支援者の存在を知ってもらえるきっかけになることを祈って、“「医療的ケア児・者」支援の日”を設定しました。
僕に声かけしてもらう必要は全くありません。
どうぞ日本中で9月18日を一つの旗印として、医療的ケア児・者の方々や支援者の人達のより良い未来について考えていただける取り組みをしていただけたらと願っています。
なお、2024年9月18日は、日本で唯一「医療的ケア児・者支援の日」として岡山城がパウダーブルー色にライトアップされます。

この記事を書いた人

9月18日は“「医療的ケア児・者」支援の日” | いのちと生活を支える

寺澤大祐

てらざわ だいすけ
岐阜県総合医療センター/新生児内科医長、周産期(新生児)専門医・指導医。
日々赤ちゃんと戯れる仕事をしています。本当は赤ちゃんたちと、きゃっきゃうふふ、とやれたらいいのですが、僕の眼の前にいる赤ちゃんたちは、まだまだそうやって戯れられるような状況にはない子たちばかり。そんな中で日々、その赤ちゃんの幸せを願いながら、医療を提供しています。そんな現場からのお話をお伝えする予定です。

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