2022.12.19
すべての子供が大人になれますように
- 執筆:
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寺澤大祐
こんにちは、岐阜県総合医療センター新生児内科の寺澤です。
11月17日〜23日の岐阜市役所ライトアップ、ご覧いただけましたでしょうか。
今日は少し新生児内科の中ことをお話しさせていただきます。
新生児内科とは、早産や未熟な状態の赤ちゃん、病気が見つかった赤ちゃん、生まれてくるときに苦しくなってしまった赤ちゃん、などを治療する専門の診療科です。小児科や産婦人科の専門研修を受けて一人前とみなされた医師(小児科専門医)のなかで、さらに赤ちゃんの集中治療を専門としたいという奇特(?)な医師が専門研修を受け(新生児専門医)、若い医師や看護師、保育士、薬剤師、臨床工学技士などと共に、赤ちゃんの救急救命に従事しています。
2022年12月現在、岐阜県で実際に新生児診療を主としている新生児専門医は8人。この8人を中心として、年間14,000人出生してくる赤ちゃんの命を守っており、岐阜県総合医療センターの新生児内科はその最後の砦として、日夜を問わず、他の病院では対応できない重症の赤ちゃんの救命にあたっています。なお、当院での新生児専門医は4人とまだまだ不足しておりますので、仲間になってくれるお医者さん、絶賛大募集中です。
僕たちが救命する赤ちゃんたちはNICU(新生児集中治療室)に入院します。そしてNICUで集中治療を受けた後、GCU(回復期治療室)の中で数週間〜数ヶ月の入院期間を経てお家に退院していきます。それは僕たち医療者も本当に嬉しいことです。
一方で、なかなか退院することができず、長期の入院となる子もおります。僕が着任した15年前には3歳を超えた子がおりました。さらに前には9歳(!?)の子もGCUで治療を受けていたようです。長期入院となった子は、病気の治療が必要であることは確かなのですが、その中でも子供らしい遊びや、心の成長を与えてあげたいと考えており、そこでは病棟保育士らが大活躍してくれます。
先日のこと、GCUである赤ちゃんの1歳のお誕生会が開かれました。
お誕生会があることは皆の楽しみであり、2週間も前から若い主治医が毎日の総回診で「○○ちゃんのお誕生会は13日の15時半からです。」と嬉しそうに報告してくれていました。担当看護師や保育士らも、僕らおじさん医師らには内緒で(?)、若い主治医らと共に誕生会の準備を色々としてくれていました。
当日。スタッフたちの心温まる手作りのお祝いと、素敵なお歌のプレゼント。素敵な飾り付けが行われ、スタッフが持参した素敵なお洋服に包まれて、赤ちゃんも「何事か?!」と普段とは違った空気に若干ビビりながら、笑顔に包まれたひとときでした。
それにしても、この子やスタッフらの顔を見ていると、この1年が本当にあっという間だったように思うし、色々なことがあったなぁ、と思うこともあるし。 笑顔と明るい歌と一緒に、早く外の空気を吸わせてあげたいなぁ、犬も車も知らないままに1歳になっちゃったなぁ…と考えたとたんに涙が潤んできて…。
おじさんになると涙脆いんだよ…。
「すべての子供が、大人になれますように。」
「生きることは、平凡な奇跡の連続。」
最近僕があちこちで繰り返し伝えているこの言葉。
全ての赤ちゃんが、平凡な奇跡を繰り返して、どうか大人になれますように。
そんなことを願う1日でした。
あなたが早くお外を知ることができるように、僕たちも頑張るね。
* * * *
今日のお昼ご飯です。
医学論文脱稿後の栄養補給!
ここのラーメン、ほんとに美味しくてお気に入りです!
いぶきからのコメント
寺澤さんのプロフィール。「日々赤ちゃんと戯れる仕事をしています…」
「いったいいつ寝てるんだろう?」と思ってしまうような毎日を、そんな風に綴ってしまえることが本当に素敵だなと思います。
だから、ともすれば無機質に思われかねない空間かもしれないけれど、人が人として自然に大切にされている場所なんだよと、聞かせてもらって、大きくうなずいてしまいました。
いぶきもそんな場所でありつづけたいと思います!
それにしても、いいなぁ。ありがとうございます!