雪の世界から | 思いを育み、役割を作るえんがわピープルの物語

雪の世界から

執筆:

いぶきからのコメント

こんな感性と価値観を持ち続けて生きている加藤さんと一緒に働いていたことを幸せに思います。いぶきに残してくれているものを大切にしたいなあと思うとともに、えんがわスケッチでまだまだ聴かせていただけることが嬉しくてたまりません。
おごることなく感じ続け、しなやかに考え続け、深くみつめつづける。いぶきにたずさわる以上、私自身がなくしたくないと思っていることです。そして、できることなら、闘うわけでも、抗うわけでも、避けるわけでもなく、日々の出会いを素直に生きるエネルギーにしたいと思っています。なかなか訪ねることができていないのがもったいないですね。春になったら…。その日が待ち遠しいです。(きたがわ)

石徹白(いとしろ)は、大雪が降りました。
積雪が毎日30cm以上あることも・・・。

一番寒い日はマイナス10℃になってダイヤモンドダストが見えることもあります。
石徹白の集落の方々も生活のために、雪とうまく付き合っていかなければなりません。
雪が降る前には、集落にある小学校やお寺や御堂の雪囲いを行います。
集落の人々がそれぞれに集まって、慣れた手つきで、雪がなだれてこないように板を取り付けます。

雪に打ち勝つというよりも、雪と共に暮らしていくことを選択していく。
社会には、打ち勝つ、打ち負かすことのできない大きな何か、人間ではどうしようもない強大な環境変化があることが分かります。
今でこそ、有限である石油や莫大なエネルギーを消費する金属加工技術があってこその除雪車やエンジンを利用した迅速な移動手段が私たちの生活を便利(?)なものにしてくれていますが、昔の人々の環境に寄り添った暮らしを 今一度考えければならないと思います。
日本はもともと不便で貧乏で資源の乏しい国であり、人々が様々な知恵で乗り越えてきた地域であることを思い出させてくれます。 

 

そんなしんしんと降る雪の中でいぶきでしたことを振り返ると、こんなことを思います。
「助けを求めること、できないことは悪いこと?」なのかと。
「胸を張っていぶきで、大好きな仲間達とこんな仕事をしています!」と言いたくて始めたいぶきの自然栽培。
しかし、この栽培方法は一癖も、二癖もある栽培方法でした。


いぶきの農作業はまず、ないないづくしから始まりました。
農地がない。
機械がない。
技術がない。

ないものは、探すしかありません。
初めは、何もないことがわずらしくて仕方がなかったのですが振り返ってみると、この何もないがとても良かったことなのではないかと思っています。

私が知らないところで、様々な人が動いてくださったと思うのですが、ないからこそ、素直になれたり、様々なものを提供してくださった方に感謝の気持ちでやりとりができたことが、今でも自分の財産になっています。
弱さを認めたことで、みんなのために仕事ができる。
僕がしたい生き方はこれなんだと気づけた瞬間でした。
 

 

自然栽培は不思議な栽培で、農薬や肥料に頼らない分、自分自身の怠けた気持ちが栽培方法にすぐに影響してしまう点や、人や自然の声を素直に聞いてそれに寄り添った行動や思いを反映しなければ作物が育たないという不思議な農法でした。
自然栽培の柿の葉が、ほんの数日で、毛虫に全て食べられてはだかになってしまったのは良い思い出です。
でも自然は、数日の猶予を与えてくれているのです。
そこで何ができるのか自然はちゃんと待ってくれます。
グラデーションの中で変化し存在する自然の中で自分がどんな落とし所を見つけられるかいつも考えさせられます。

 

正直失敗だらけです。
でもそんな経験から、「できないことは悪いことではない」 ということが言えます。
できないことで見つけられたものが、価値になるということです。
できないことは、できることより大きな結果を生むかもしれない。  

 

これは、福祉の分野でも、言えるのではないでしょうか。
障がいのある誰かのできないことを見つめると、社会がより豊かになるという事実。
できる人のことだけを見つめていたら気づけない部分に気がつくことができて、社会が全ての人にとってより良い方向に進んでいく。
社会的弱者(僕はこの言い方が大嫌いですが)を隔離、保護していた社会から、その方々を暖かな優しさで全て包み込む社会になれば嬉しいなと思います。

 

 

樹氷がとってもきれいだったので写真を撮りました。
きらきら。

続く

この記事を書いた人

雪の世界から | 思いを育み、役割を作る

加藤亮太

かとう りょうた
2020年までいぶき福祉会で勤務していました。
2020年4月から郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)に移住して生活しています。
標高700mにある270人ほどの小さな集落です。毎日キツネに出会う道が通勤路です。
今は、白鳥町にあるぶなのき福祉会で支援員をしながら石徹白でできること 、郡上でできることを考えています。

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