縁側が織りなす共生文化へ | つながり、価値を創るえんがわピープルの物語

縁側が織りなす共生文化へ

いぶきからのコメント

初めてゴザーレプロジェクトのお話を伺った時、その丁寧で夢のある活動に一気に引き込まれてしまいました。お招きいただいたイベントの風景に、まちづくりってこんなにひとりひとりが楽しんで参加することができるんだと衝撃を覚えたものです。コツコツと人と人の網の目を結っておられる吉田さんのお話をもっと伺いたくて連載をお願いしました。フェニックスさんに隣接する「ゴザーレの杜」植樹祭にもいぶきとしてお招きいただき、ライラックを植えさせていただきました。いつかご案内させてください。

いぶきさんの縁側で

こんにちは、この度はいぶき福祉会さんの縁側にお招きいただきありがとうございます。
このぽかぽかした縁側に座っていると、思いがけずポロリと、普段なら口にしない話まででてしまうかもしれませんね。
いぶきさんにはそんな場の力があるような気がします。
元来自分のことはうまく話せませんし、まずは身近な光景をぽつりぽつりと言葉にしてみたいと思います。

そうそう「GOZARE(ゴザーレ)」のことも。
私は各務原市にあるフェニックスという医療・福祉系の法人グループで働いていて、近年はGOZARE(ゴザーレ)という共生のまちづくりプロジェクトに関わっています。プロジェクト名の由来は「何でもござれ、誰でもござれ」から(笑)。
そこでのいろいろな発見や出会いなどもお伝えできれば良いなと思っています。

「想像してみてください」

先日、まんまる笑店代表取締役の恩田聖敬さんのお話を聞く機会がありました。
ご存知の方も多いと思いますが、恩田さんは若くしてベンチャー企業で目覚ましい経営実績を上げた後、プロサッカーチームFC岐阜の経営を任されて一躍時代の寵児へ。
ところが同時期にALS(筋委縮性側索硬化症)を発症してまさに絶望を体験されます。

ご本人にお許しいただき、その言葉を引用させていただきます。

 

想像してみてください
ある日突然、手も足も頭も動かせず、
話すことも出来なくなる自分を

想像してみてください
どれだけ頭がかゆくても、
じっと耐えるしかないやるせなさを

想像してみてください
鼻水も汗も唾液も、拭えず、
垂れ流すしかない情けなさを

想像してみてください
どれだけトイレに行きたくても、
自分でズボンをおろせない惨めさを

想像してみてください
自分の子供を
抱き締める事さえ出来ない哀しみを

想像してみてください
好きな人が隣にいても、口説き文句も言えず
指一本触れられない切なさを

(文:恩田聖敬さん)

 

 

実は私にも筋難病の家族がいるので他人事として聞き流せなくて胸がざわつきました。

世間では「多様性」という言葉があふれています。
恥ずかしながら私自身ダイバーシティだのインクルージョンだのと分かったような横文字をちょいちょい便利に使うことがあります。

多様性って、互いに想像を超えた価値観、視点を持つ他人同士が出会って、時にぶつかり合いながらもつなげて織りなすもの。でも現実には、赤の他人同士が互いの違いを認め合って、苦楽をともに生きていくってそんなに簡単ではないはずです。

ちょっとズレるかもしれませんが、社会学者の田中俊之さんが、多様な主体の社会参加を進めるには市民の寛容さが必要で、一見日本社会は寛容なようでいてその多くは消極的寛容、すなわち無関心な寛容だ、と講演会で話されていたのを思い出します。

あなたには本当に多様性を尊重し合う覚悟があるのですか?と改めて問われている。
恩田さんのお話を聞きながらそんなことを考えました。

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共生のまちづくりGOZARE(ゴザーレ)プロジェクト

少し前の話になりますが、「地域共生社会推進検討会」最終とりまとめ(令和元年12月)という報告書が厚労省から出されました。

これは知り合いの高校の先生がスマホメールで教えてくださいました。
「最近こんな報告書が厚労省から出されたけど知っていますか?これってGOZAREプロジェクトの可能性を指し示しているじゃないですか。」といった感じで。

読めばなかなか面白い!?画期的な報告書で、特に「多様な主体による地域活動の展開における出会い・学びのプラットフォーム」という考え方が個人的にドンピシャでした。

そのポンチ絵には、地域づくりには専門職による地域課題解決を目指した福祉サイドからのアプローチだけでなく、興味関心から始まる、人・くらしを中心に据えたまちづくりサイドからのアプローチが交わって、そこで活動同士が出会い、お互いから学び、多様な化学反応が起こる事が示されています。

そうこれだ、これ!私にとってのGOZAREのチャレンジはこの「出会い」と「学び」なのだと。もう少し言うなら、長年職場で取り組んできた地域ぐるみの子育て支援でも、不器用ながら同じような想いをみんなで話し合ってきたよね、と。

あらかじめお伝えしておきますが、私はGOZAREを代表してメッセージを発信する立場にはありません。もともとGOZARE自体、中心となる誰か一人が最初に答えを用意しているスタイルではなくて、持続可能な共生のまちづくりという考えに共感し関わってくださる人々が、それぞれの想いを持ち寄りながら、みんなでゆっくり文化を育てていくようなプロジェクト設計になっています。

いまGOZAREでは、おおよそ隔月でちょっとしたイベントを行っています。こうして私がいぶきさんの縁側でお話ししているように、いつか皆さんもGOZAREにふらりとお立ち寄りいただけると嬉しいです。前にいぶき福祉会の北川さんも話されていましたが、こうして重なり合う人たちのたくさんの物語がやがて大きな物語になって、本当に多様性を尊重し合う新しい文化を創っていくのではないかと胸をふくらませています。

 

この記事を書いた人

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吉田理

よしだ おさむ
岐阜市在住。フェニックス・グループ地域共生社会推進室長。岐阜県老人保健施設協会事務局長。岐阜県男女共同参画二十一世紀審議会委員。
高齢者施設を拠点に元気高齢者の力を借りて学童保育を行うなど、地域ぐるみの子育て支援で世代、性別、ハンディキャップの有無に関わらず参加できるまちづくりを実践。近年取り組むGOZARE(ゴザーレ)プロジェクトでは裏方担当。社会福祉士。プライベートでは1児の父。

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とりちゃん やま