岐阜の小さな隣人まつり vol.1〜パエリア編 | 思いを育み、役割を作るえんがわピープルの物語

岐阜の小さな隣人まつり vol.1〜パエリア編

執筆:

いぶきからのコメント

関係づくりの中から仲間の仕事を作り出していきたい。ともすれば、関係づくりそのものを、いぶきの、いや社会の中での大切な役割として仲間たちと一緒に取り組んでいきたい。それが昨年2022年度からの私たちの重要テーマです。そんないぶきの真骨頂になっていくであろう活動が、平塚弥生さんとともに始まりました。こじんまりと、ほんわかと、グツグツと…?!
みなさんの心にも、じわじわと届くにちがいありません(笑)どうぞおたのしみに。

隣人まつりのこと

隣人祭りというフランス発祥のお祭りをご存知でしょうか。

隣人祭りとは、地域の子どもからお年寄りまでが食事や飲み物を持ち寄り、語り合うフランス発祥のフランクなお祭りのことです。
これは、あるアパートメントで一人暮らしのおばあさんが孤独死をして1ヶ月後に見つかったことで、大きな衝撃を得た住人たちが発起し、フランス全土、他の国々でも広がっていきました。

昨年(2022年の3月)に、日光町の作業場のお庭で、仲間のみんなと一緒にピザを作って食べたことがありました。

詳しい記事はこちら →「未来の自分に向けて、誰かと共に食べる」

共に作って、食べる体験をした仲間が、昔家族と一緒に庭でバーベキューをしたことを思い出し、思い出を語ってくれたということもありました。
それ以来、日光町の作業所の仲間たちは、私のことをピザのお姉さんと言います。(お姉さんと呼ばれることにむず痒さを覚える年頃です笑)
彼らにとって、楽しかった思い出として、いつも「あの時のピザ美味しかったよね、またやりたいよね。」と言ってくれます。

そのような会がまたできないかなと思っていたところ、再びいぶきさんから地域の孤独孤立解消のためのアイデアがないかというご相談がありました。
そこで、いぶきさんの本部がある、隣近所の方々と小さな隣人まつりをやってはどうかと提案しました。
一回だけではなく継続してみようということになりました。
中心で活躍するのは、いぶきのあかねグループの仲間たち。

小さな隣人まつりでは、料理を地域の人たちと一緒に作り、共に食べることにしました。
地域の人もいぶきの仲間も、職員もみんな一緒に混ざって料理を作ることは、楽しい、美味しいを超えた何かがあるのではないか、その何かは、今はわからないけれど、回数を重ねて見出せればいいなと思います。

まずは、5回までの計画を立てました。
1回目(9月) パエリア作ろう
2回目(10月) ピザ作ろう
3回目(11月) 芋煮会
4回目(12月)餅つき
5回目(  1月)雑煮の会

準備もふくめて祭りです

小さな隣人まつりでは、あかねのメンバーは全員参加を目標としました。
できることは限られるけれど、関わることで地域の人たちとの接点が増えていくのではないかと考えました。

まずは、地域の人たちに来てもらえるようにチラシ作りから

一文字一文字丁寧に、かわいいイラストも描かれています。
これを毎日のお散歩の時に配りに行きました。

写真

いよいよ当日

当日は、準備をしていると気になってしょうがない様子。

今回は、簡単にできるように、手の力や握ることが出来なくても調理に参加できるように、食材の工夫やアレンジを加えました。
材料の準備を始め、お米の炊き加減で重要なお水を仲間のみんなに汲んでもらいました。
多すぎればベチャベチャに、少なければカチカチになってしまう重要任務です。
630mlという微妙な量は難しく、大きな計量カップにここまで入れてと印を付けて入れてもらいます。

そして、次はあさみさんがパエリアのスープを作る作業です。
調味料をスプーンで数を数えながら丁寧にカップに入れていきます。
これも、味を決める重要なお仕事です。
「あさみさん、頑張ってよ! 一番大事な仕事だからね」と言うと、
任せて!と言わんばかりの表情で、こぼさないように注意しながら任務を果たします。

その次は、しめじをほぐす作業です。

これは、手の力がなくても進められるので、とても人気のあるお仕事でした。

しめじがなくなってしまうと、玉ねぎの皮むきです。
指の力がなくて、手首を捻ると言う動作が加わるので、手の力があまりない仲間にはちょっと難しい作業です。

ある職員さんが、「それは無理だよ」と言いました、しかし他の職員さんが「一緒にやってみよう!」と声をかけ玉ねぎを少しだけ剥き、支えるようにして一緒に剥いていきました。
ほんの少し剥けただけだけど、とても満足そう。聞けば、気に入ったものしか触らないし、手の力がないから難しいのではないかと言うことだったよう。
だけど、その場の雰囲気なのか自分も仕事をしなければならない!という使命感なのか、難なく玉ねぎを触り、作業に加わっていきました。

まだまだ、作業は続きます

先ほどのあさみさんは、包丁に挑戦することにしました。
スタッフがサポートしながら手を切らないようにアスパラを切ります。

 

あさみさんは、スタッフに支えられながら右手にしっかりと包丁を持ち左手は、手を切らないようにちゃんと猫の手にしていました。
どこかで習っていたかもしれないし、お家でお手伝いをしているのかもしれません。
アスパラはあさみさんの手によって、綺麗に切られました。

そして、次はパプリカです。
パプリカは、包丁で切るものと言う固定概念がありましたが、ちぎってみてもいいのではとちぎってもらいました。
ただ、手指の力がないためにうまくちぎる事ができないので、あらかじめ切れ目を入れて裂くようにカットしていきました。

 

パエリア鍋で米を炒め、スープをいれ蓋をして炊く。ここからは少し時間がかかります。

地域の方が次第に訪れて、歓談していきます。
「ご飯からやればもっと簡単にできて早く食べられるのに、かわいそうに」と言う声がありました。
それに対して
「こうやって、待つのがいいんですよ」と答える職員さんがいました。

何もかも、効率化を求め急かされるように毎日を過ごしている中で、ゆったりとした時間が流れています。
彼らに急ぐ必要なんてない、工夫次第でなんだってできるというのを教わりました。

できあがりです

そうこうしているうちにパエリアができ上がってきました。

 

綺麗に炊き上がったパエリアを持ってきたお皿に盛り付け、「いただきます」をしました。

みんなで作ったパエリアは格別な味。
食も進みます。

  

写真

この日は、仲間のみんなは給食がありましたが、パエリアも食べ、給食もよく食べました。

 

初めて会った、チラシ作りの時とは初対面で緊張した表情だった仲間たちも、笑顔がほぐれます。
野菜を触り、調理をし、鍋から上がる熱気や、周囲に漂う香り、完成した鮮やかなパエリア、会話をして、味わう。
全ての五感を使い体験した小さな隣人まつり。
他の事業所で働く仲間たちも気にして、遊びにきて一緒に食べ、地域の人も喜んでくれてパエリアの会は大成功を収めました。

 

みんながそれぞれの役割を持つこと、日常とは違う環境と体験、それに地域の第三者が加わる事がスパイスとなり、これまでの常識を一歩越えるキッカケになっていくのではないでしょうか。
それは、いぶきの仲間たちの体験が増えたことだけではなく、職員や地域の人たちの固定概念やこれまで当たり前と思っていたことが少しだけ打破することで、ゆるやかに繋がっていくように感じました。

 

次回は、ピザの会。
どんな発見があり、どんな展開になっていくのか楽しみ。

小さな隣人まつりは連載しますので、楽しみにしていてください。

この記事を書いた人

岐阜の小さな隣人まつり vol.1〜パエリア編 | 思いを育み、役割を作る

平塚弥生

ひらつか やよい
株式会社Coneru/代表取締役、フードビジネスコンサルタント
食で人と地域のつながりを支える。ふわふわ過激派🍞。岐阜県大垣市で菓子製造業許可付きシェアキッチン 2店舗と食品自販機を運営するフードビジネスコンサルタント。食品自販機専用商品、規格外食品の商品開発を得意とする。
現在、IAMAS博士後期課程在学中、フードコミュニケーション 地域コミュニティについて研究。共に料理を作り一緒に食べるワークショップを各地で開催中。趣味は無人販売探し。

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とりちゃん やま