表現しながら生きる | 思いを育み、役割を作るえんがわピープルの物語

表現しながら生きる

執筆:

いぶきからのコメント

篠田さんにはいぶきの営みをたびたび文章で表現していただいています。そのたびに、流れ込んできたり湧き出てくる感覚を、どうやってあのシンプルで丁寧な文章に凝縮させていけるのかと不思議でたまりません。でも表現するというのはそういうことなのかなと。正直に、素直に、恐れずに。それが生きる希望になることも思い出しながら、受け止め、伝えていきたいと思います。

先日、ギャラリー水の音さんで『生きるを彩る』という展示をやっていたので、スタッフと一緒にお邪魔してきた。
私も愛用している牛乳パックのバッグを作っているワークサポートみやこさんの他に、かみなり村本舗さん、夢工房仁さん3つの事業所の方が作っているアートとクラフト展だった。

 


どの作品も独創的で、素晴らしい作品ばかりなのだけど、展示の中央にあったある作品に私はひときわ心を奪われた。

セロハンテープを丸めて作られた汽車で
ものすごく繊細な作品。
どうやってこの会場まで持ってきたのか、
もしやここで作った?とも思えるその壊れやすそうな作品の解説には、「ガラスのように傷つきやすい彼そのもののような作品です」と説明書きがあり、なんだかその彼が目の前にいるような感じがして、ずっと目が離せなかった。

※なんとこの作品のことは、ワークサポートみやこの川上宏二さんの記事「私を支える人たち」にも出てきていました。繋がりますね。

障害者のアートは、アール・ブリュットとか、アウトサイダーアートとか、エイブルアートと言われる。
生の芸術、といって、誰かに教えられたり、特別な技法により描かれたものではなくて、人間に備わったアート性がそのまま表現されたもの、とかいろいろな意味で、障害者のアートに価値を見出しひとつのアートのカテゴリーとして君臨している。


まぁそんなうんちくはどちらでもよくて、何かを図ってというよりも、自分そのものをダイレクトに表現するそのアート作品たちは本当に心に響くものがあって、私はそういう絵に向かうと、自分は自分でいいのだとすごく励まされる。
私も自分で詩や文章を書く人なので、何のためでもなく、ただただ今の自分の衝動に正直に、喜びや悲しみを表現するという行為の意義を少なからずも分かっているつもりだ。
だから余計に、その人そのものを感じる作品に触れると心に湧き上がるものがある。
もちろん、その作品自体もあまりに芸術的だ。
丁寧に描かれた線はその人のこだわりからなるもので、一部の狂いもなく線を引けたり、思いもよらない構図とキャラクターが出現したり、見ていて飽きない作品ばかり。
それを隣で見ている職員さんたちや利用者の仲間たちのなかに、また別の物語があるんだろうなぁと想像すると、余計にその作品が愛おしく感じるのだ。

 

 

誰のためでもなくて、
誰の評価もいらず
自分のために
自分がやりたいから
自分が描きたいからかく。

なんて素敵なことなんだろう。

それが大人になっていく段階でいつしか
「なんのために?」っていつも言われるようになり
表現することを怖がり、自分の好きを諦めて
やらなければならないことに埋没していく。

大人は荒削りの子どもたちの感性を
どんどん丸くしてしまう。
そして子どもたちは「自分らしさ」を見失い
表現することを恥ずかしいと思うようになる。

描くことや表現すること作ることは
人生の喜びで、生きることそのもの。
そういう人間もいて、それで輝く人がいる。
そんな機会を子どもや若者から奪わずにいたい。

この週末、ヒトノネのスタッフの音楽家たちメディアコスモスのドキドキテラスでライブパフォーマンスをやらせてもらっていた。
彼らはそれぞれに音楽をやっていて
趣味というレベルではなくて
それでお金をもらうプロでもあるし
ある意味で息を吸うように音楽をやっている。
名古屋のテレビ塔の前でパフォーマンスしたり、音と絵の合わさったパフォーマンスをしたり、
ストリートで音楽を奏でる彼らは最高にカッコいい。

そこに今日は高校生のAくんも一緒に参加していた。
大人に負けず劣らず、もの凄いカッコ良い音を奏でて、自信に溢れ、なんというか
誰よりもカッコ良すぎて心を打たれた。

私も表現することを恐れずにいたい。
セロハンテープの列車を丁寧に作りつづける彼のように。
大人のなかで堂々とキーボードを弾くAくんのように。
そこに生きる希望が詰まっている。

 

 

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この記事を書いた人

表現しながら生きる | 思いを育み、役割を作る

篠田花子

しのだ はなこ
一般社団法人ヒトノネ代表理事。
探究型学童保育ヒトノネと放課後等デイサービスみちな、不登校支援Imaruを運営。ときどきライター。岐阜市在住、3児の母。趣味は音楽鑑賞、いい建築めぐり、畑、美味しいものとお酒。
ヒトノネのHP https://hitonone.com/

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