石徹白で感じたギフトの文化 | つながり、価値を創るえんがわピープルの物語

石徹白で感じたギフトの文化

執筆:

いぶきからのコメント

加藤さんの語り口が聴こえてくる文章です。静かだなぁ、あったかいなぁ…ふと癒されている自分に気がつきます。
石徹白の桜はもう咲いたのでしょうか?加藤さんの語る春がきいてみたくてたまらなくなっています。
いぶきでは農業チームの営みを丁寧に丁寧に進めてくれていました。そろそろですよ!と声を届けなければいけませんね。

私の今住んでいる石徹白は岐阜県郡上市の最奥の集落です。
九頭竜湖や福井県大野市にも隣接した岐阜の県境の集落です。
(地図上では岐阜市の真北にあるんです!)
私が郡上で仕事をするようになってからもいろんな方に、 なんで信号もスーパーもない山奥の石徹白に移住したの?
と言われることが多いのですが、今回はそのきっかけになったこと、 そしてそこから繋がった取り組みをお伝えしたいと思います。

 

石徹白を知るきっかけになったのは、 妻がインターネットである記事を見つけたことがきっかけです。
それは、「いとしろカレッジ」というものでした。
カレッジとは言いますが、学舎があるわけではありません。

このカレッジは地域おこし協力隊をされていた方を中心に、地域の方や移住者が講師やスタッフとなり、地域の魅力を学び、そこに生きる方の暮らし地域の課題を見つめ 今を生きる私たちがどうあるべきかに目を向けるプログラムでした。 

いとしろカレッジ 

 

2016年、夫婦でこのプログラムに参加して、様々な人に出会いました。
川を保全する方、生き方を哲学する方、農家さん、先輩移住者の方々・・・
印象的だったのが、この石徹白に長く住む高齢の方々でした。地域にある漬物の作り方を教えてくれ、どこの者とも分からない参加者の私たちに、自分の人生を教えてくれました。 

人生の中で様々な経験をされていて、「地域にないものは、自分たちでなんとかする、なんとかしてきた」人ばかりで、生きる力がある方々でした。「甲斐性」のある力強い人々です。
その人生の清々しさや、愛に溢れる言葉に感謝と尊敬。
自分のチクチクとした心がゆるむ「優しさと愛に溢れる時間」がそこにはありました。

そんな人にいつかなりたい!ここに住みたい!と二人で思う中で、 その後2年ほど石徹白に通い、妻と自分自身の一大決心で、石徹白に移住しました。
僕たちは移住に至るまで、数年かかりました。

 

惜しげもなく、助言、美味しいお料理や、その知恵・・・
石徹白で生活をしていく中で、様々なものをいただいてばかりでした。
そして、与えられると、自然にお返しがしたいと思う気持ちが溢れてきました。
ある日にお渡ししたお菓子のケースにお味噌がいっぱいになって帰ってきたことも・・・。
お返ししても、また数倍になって愛が返ってくるのです。

そして、こんな相互のありがとうの思いの交換から始まった先輩移住者の方の活動がいとしろサロンカーです。
先輩移住者の方の高齢者へ恩返しがしたいという思いから始まったこの活動は、 石徹白の高齢者の方の買い物支援や通院支援を行う移動ボランティアです。
そこに僕も現在、ドライバーと、活動運営事務をしています。

石徹白には免許を返納されたり、車を運転しないけれども、 様々な理由で車を利用して用事を済ませたい方が見えます。
そこにボランティアの車に乗り合いをするという取り組みです。

交通弱者、買い物難民の解消といった地域の課題解決にも繋がっています。
そして買い物以外にも、みんなで、お花見、紅葉狩りに出かけたりすることもあります。

 

僕自身は、美味しい料理ができるわけでもないし、 まだまだ甲斐性がある人間ではないですが何もできない自分が、 少しでも自分のしたことで喜んでいただけることが嬉しいのです。

 

そして、何より一緒にお話ししていると石徹白のことを知ることができ、 乗合仲間同士の会話が広がって様々な交流ができます。
それがとっても楽しいのです。
この活動の大きな魅力です。

 

無理をしなくていい。肩肘を張らず、自分のあるがままでいい。
自分が笑顔になれる取り組みは、誰かに何かを与え相手を幸せにする。
石徹白で感じたギフトの文化です。
そしてこのいとしろサロンカーの活動は、これからの社会の幸せの形に通じる根源的であり、忘れてはならない福祉の思想があるように思えてならないのです。
これからも、細く長くこの活動を続けていきながら、この先に広がっている世界をワクワクしながら体験していきたいなと思います。

 

この記事を書いた人

石徹白で感じたギフトの文化 | つながり、価値を創る

加藤亮太

かとう りょうた
2020年までいぶき福祉会で勤務していました。
2020年4月から郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)に移住して生活しています。
標高700mにある270人ほどの小さな集落です。毎日キツネに出会う道が通勤路です。
今は、白鳥町にあるぶなのき福祉会で支援員をしながら石徹白でできること 、郡上でできることを考えています。

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