地域を編み、未来を描く~ソーシャル・キャピタルの物語〜interview vol.3 | つながり、価値を創るえんがわピープルの物語

地域を編み、未来を描く~ソーシャル・キャピタルの物語〜interview vol.3

地域や社会の中で、信頼しあい、おたがいさまと思い合える、豊かなつながりを育む大切さ。これを「ソーシャル・キャピタル」といい、ポスト・コロナの社会を支える価値概念としてとても注目されています。

いぶき福祉会(以下、いぶき)では、日々の営みをこのソーシャル・キャピタルを豊かにする活動として物語り、寛容で協働する社会を創っていきたいと考えています。

この連載は、いぶきとつながることで新たな気づきや暮らしの変化があった方々へのインタビューを通じて、地域の相互理解やおたがいさまの関係づくりに関心を深めていただければと思い始めたものです。

共感や発見が満載だと思います。お楽しみいただければ幸いです。

 

第3回は、岐阜市内で模型制作会社を経営する小山周一さんにお話を伺いました。いぶきの活動に深く共感し、社員の皆さまともども、さまざまな形で支援を続けてくださっています。

(お話を伺った人 いぶき福祉会 北川・森/合同会社めぐる 木村・長谷川)

執筆:

和模型工房は何でもつくる会社

北川:今日はお越しくださりありがとうございました。早速ですが、和模型工房さんがどんな会社か教えていただけますか。

小山さん:社員5名で企業向けに模型を作る会社を運営しています。一般的に「模型」と聞くと、「建築模型」を思い浮かべる方が多いと思います。例えば、家がほしいお客様に模型を見せることで、図面ではイメージしにくい部分も具体的に伝わります。実際に模型を見せると、商談がスムーズに進むこともあります(笑)。ただ、当社は建築模型に限らず、さまざまな模型を手がけています。「これも模型なの?」と言われるものまで、幅広く対応しています。例えば、展示会用の新商品の機器・機械の模型、土木模型、プラント模型、さらには人工衛星の模型まで作っています。ここまで幅広く対応できる会社は多くないので、おかげさまでさまざまな業界からご依頼をいただいています。

北川:私もものづくりの現場が大好きなので、御社に伺って模型を拝見するとワクワクが止まりません。一緒に訪れた方たちの間でもどんどんファンが増えています。

寄付をしたいと思いながら、モヤモヤしていた

北川:最初にお会いしてから10年以上が経ち、現在は「ぎふハッピーハッピープロジェクト」にもかかわっていただいています。小山さんは、どのような印象を持っていぶきにおつきあいくださっていますか?

小山さん:最初は、北川さんが岐阜県のものづくりに関する講演会に登壇されていたのを拝見したことがきっかけでした。講演会で「県外出身の北川さんが、なぜ岐阜に根ざした活動をされているのか?」という質問がありました。それに対して、「最初は岐阜に特別なこだわりがあったわけではないけれど、せっかく岐阜に来て、ここで出会った仲間たちと一緒に活動していきたいと思ったから」と話されていたのがとても印象に残っています。

北川:その後、パストラルいぶきいぶきの建築模型の相談に乗っていただいたりしましたが、一時期やり取りがなくなってましたよね。それが数年前にFacebookでぼくの投稿に「いいね!」をしていただいたのをきっかけに、またメッセージをやりとりするようになり、お伺いした際に寄付の話になったんですよね。

小山さん:そうですね。発注の関係で不要になったアクリルケースを活用してもらう話になり、その時に私から寄付について話しました。子どもの頃にボーイスカウトをやっていたこともあり、ボランティアや募金活動には馴染みがありました。特に、親のいない子どもたちや、生まれながらに困難を抱えている子どもたちのために何かしたいと思っていました。
しかし、いざ寄付をしようと思っても、どこに寄付すればよいのかわからなかったんです。ネットで調べても、施設や募金先はいろいろありますが、「本当に適切に使ってくれるのかな?」という不安もあり、なかなか決められずモヤモヤしていました。そんな時に北川さんに相談しました。
北川さんから「ぎふハッピーハッピープロジェクトという企画があるんだけどよかったら」と言われて、子どもたちへの支援はいずれまたご縁があればと思い、参加させていただきました。参加してよかったと思っています。

北川:その後、子育て支援の団体を紹介させていただきましたね。

小山さん:紹介いただいた団体に初めて私も伺ったんですけど、会社とそれほど離れていなくてよかったです。子どもの放課後支援もやられていて、子どもたちにうちでものづくりを体験する機会を何回かもたせてもらったりもしました。

社員みんなでいぶきにかき氷を食べに!

小山さん:本当は(個人として誰にも言わず)こっそりと寄付をしたいと思っていたんです。でも、北川さんから会社として名前を出してくださいと言っていただいて、会社の紹介も出させていただいています。
意外だったのは社員の反応でした。寄付の件はいぶきの年次報告書を見せて「ここに和模型工房の名前が載っているよ」くらいしか言ってなかったんです。先日、いぶきからボランティアに誘っていただいて、うちの社員も誘ってみたんです。来てくれるかなと思っていたんですけど、みんな「じゃあ、いきます」と言ってくれて、すごくうれしくて。ある社員は奥さんが以前、福祉施設で働いていたことがあったらしく、「じゃあ嫁さんにも聞いてみます」と言って家族で来てくれました。
地域とのかかわりみたいなものをもたせてもらえたのは、本当に大きいなと感じています。あと、うちの社員ってみんないい子なんだなと実感できました。

北川:個人的に寄付するだけだったら誰にも知られなかったわけですから、会社として寄付してよかったですね。社員のみなさんそろってで「ほとり」にもお越しくださいましたね。あの時はどこかへ行くついでだったんですか?

小山さん:いえ、暑いから「おいしいかき氷を食べに行こう!」という話になって、みんなを連れて行ったんです。みんな「ほとり」に行ったことがなかったので、ちょうどいい機会でしたね。かき氷を食べて、その後、仲間たちが店番している様子を見ながら一緒に時間を過ごしました。でも、その時に行けなかったパートさんがいて、今日「いぶきに行ってくる」と言ったら、「私は連れて行ってもらってない!」と言われてしまいました(笑)。次はぜひ一緒に行きたいですね。

北川:そうやって「おいしいものを食べたい」という気軽な理由で来てもらえるのがうれしいです。

「おいしい」「楽しい」が接点になっている

小山さん:若い世代は、SDGsや人権について学校で学んできているので、社会問題に対する意識が私たちの世代とは違うと感じます。特に、いぶきが「障害者支援」を前面に出すのではなく、「楽しいこと」を大切にしている点がすばらしいですね。「おいしい」「楽しい」が入り口になっているので、自然とかかわりやすくなっています。
いぶきが単に福祉活動をする場ではなく、「おもしろいものがある」「おいしいものがある」と思える場所であることが、社会との接点を広げているのだと思います。例えば、「あの時食べたかき氷がおいしかったな」と思い出すことが、結果的に福祉や支援につながる。そういう形のつながり方は、すごくいいなと感じます。

北川:小山さんのような企業が増えると、地域全体がもっとすてきになりますね。

小山さん:実は、他の会社にもハッピーハッピーに参加しないか、何度かお誘いしたことがあるんですが、すぐに受け入れられるところばかりではなくて…。そこは少し残念に思っています。でも、先日北川さんから「新しい方たちが集まる場がある」と誘っていただいた時、私の普段の知り合いとはまったく違う分野の方ばかりで、新しいつながりができたのが本当にうれしかったです。仕事を通して社会とつながってはいますが、それはあくまで一部分。異なる世界に触れることで、新しい気づきがありました。

北川:ご紹介いただけたことはとても心強いです。今後の展開のために、アドバイスがあればいただけるとありがたいです。

小山さん:仲間のみんなが描く絵やものづくりも、とても魅力があると思います。いぶきを見学した際、仲間の仕事の道具がおもしろいなと思って見ていたんですが、自分たちだったらこんなふうにできるなと思いながら見たりしていました。

北川:いぶきのものづくりツアーなんておもしろそうですね! 企業のみなさんに来ていただいて、アドバイスをいただく企画も楽しそうです。何かワクワクする企画を一緒にやっていきたいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!

まとめ

和模型工房の小山さんは、建築模型から人工衛星模型まで手がける技術力を持つ、ものづくりのプロです。「ぎふハッピーハッピープロジェクト」を通じて会社としていぶきとつながった結果、社員もいぶきとかかわるようになり、会社全体として地域とつながりを深めていくことに大きな価値を感じてくださっていることを伺うことができました。「おいしい」「楽しい」を大切にするいぶきの姿勢に共感し、新たな出会いを自然体で楽しんでくださっている小山さんの人柄が伝わってくるインタビューになりました。

この記事を書いた人

お問い合わせ

えんがわスケッチに、
あなたの未来の風景を描きませんか?

とりちゃん やま