2025.07.24
地域を編み、未来を描く~ソーシャル・キャピタルの物語〜interview vol.1
地域や社会の中で、信頼しあい、おたがいさまと思い合える、豊かなつながりを育む大切さ。これを「ソーシャル・キャピタル」といい、ポスト・コロナの社会を支える価値概念としてとても注目されています。
いぶき福祉会(以下、いぶき)では、日々の営みをこのソーシャル・キャピタルを豊かにする活動として物語り、寛容で協働する社会を創っていきたいと考えています。
いぶきでは、2023年度の年次報告書でソーシャル・キャピタルについてのアンケートを実施しました。
多くの方が、いぶきとつながることでの新たな気づきや暮らしの変化があることを伺い知り、そのエピソードをお伝えすることで、また新たな学びと対話につなげられると感じました。そんな思いで始めたインタビューをお届けします。
共感や発見が満載だと思います。お楽しみいただければ幸いです。
第1回は、千葉県四街道市の地域づくりセンターでNPOなどを応援する活動を続けておられる勝又恵里子さんにお話を伺いました。
いぶきの活動に深く共感し、さまざまな形で支援を続けてくださっています。
(お話を伺った人:いぶき福祉会 北川、山本)
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いぶき福祉会
いぶき福祉会との出会い
北川:勝又さん、いつもありがとうございます。初めてお会いしたのは、いつ頃でしたでしょうか?
勝又:日本非営利組織評価センターの山田泰久さんが、2012年11月岐阜に出張された際のFacebookの投稿で、『ねこの約束』というお店を紹介されていたのが最初だったと思います。実はその3年ほど前、山田さんの講座で、いぶきさんのかりんとうやマドレーヌを試食していました。当時、私は福祉団体のNPO法人化に関する相談を受けていたこともあり、福祉事業所のものづくりに関心を持っていました。
北川:なるほど。
勝又:その後、ファンドレイジング・日本のイベントで北川さんにお会いしました。1,000人くらい参加者がいたと思います。
北川:そんな中で、よくぞ見つけてくださいました。
勝又:当時、私はモノづくり応援プロジェクトという講座を企画していて、第1回目の講師として北川さんをお招きしたいと考えていました。

千葉での講座から10年超えのお付き合い
北川:お招きいただいた講座は、2014年の8月29日ですね。
勝又:もともとは7月に開催する予定でしたが、台風で延期になり、8月に千葉へお越しいただきました。30人くらいの方が参加されました。
北川:いそがしい10年でしたね。それからずっといぶきのことをよく見守ってくださっています。東京のビッグサイトで百々染の出展をした際にも、毎回勝又さんがお越しくださいました。
勝又さん:当時はオンラインが普及していなかったので、講座もお呼びするしかなかったんです。岐阜から千葉までお越しいただいたので、東京のビッグサイトに出展された際には、私たちが行かなければと思っていました。
北川:それで、わざわざ出展もお越しくださったのですか? 今、初めて知りました。
勝又:そうですね。
北川:そんなことから始まり、これまでずっとお付き合いいただいています。途中で疎遠になる方もいらっしゃる中で、ここまでお付き合いいただけているのは、WebやSNS のおかげかもしれません。
勝又:確かにそうですね。
北川:私と勝又さんのチャットは、ほぼリアルタイムですからね。
勝又:たまたまSNSを開いていることが多いんです。
北川:いぶきのクラウドファンディングにも毎回ご支援いただき、本当に感謝しています。同じクラウドファンディングに何度もご支援いただいたこともあり、心苦しいと思ったこともありましたが、いつも「いいです、いいです。」と言ってくださり、元気と勇気をいただきました。
勝又:いえいえ。
北川:クラウドファンディングは、途中で立ち止まったり、へこんだりすることが多いので、応援していただけると本当に助かります。
勝又さんの地域での活動
北川:勝又さんの普段の活動については、実はあまり存じ上げません。住んでいらっしゃる地域の方たちとどのようなお付き合いをされているのでしょうか?地域で積極的に活動されていますか?
勝又:いいえ、全然ガッツリではないんです。実は、毎日出かけることが多いので。
北川:そうなんですね。
勝又:住んでいるマンションは60戸なので、割とみんな顔見知りです。夫が自治会長を務めていますが、外に出るのは夫の方が多いので、私はあまり地域の方と接する機会がありません。
北川:なるほど。
勝又:東日本大震災の時には、マンションの前の道路で(液状化で)1センチくらいの隙間から砂が飛び出しました。余震があった際など、普段はあまり交流のない近所の人たちが「大丈夫ですか?」と声をかけてくださり、普段からのつながりの大切さを感じました。マンションでは、毎年「階段集会」といって、同じ階の10戸で顔を合わせ、総会に向けて話し合いをしています。生活クラブ生協にも加入しており、昔からのつながりもあります。防災訓練などでも、顔見知りがいると心強いです。
北川:月に一度草取りに参加されているとか。大変ではないですか?
勝又:最近は少しだけの参加ですが、草取りの際に、近所の人とおしゃべりすることも多いです。
北川:草取りなどの地域行事は、やはり意味があるのですね。
勝又:そうですね。秋には、ケヤキの落ち葉がたくさん落ちるので、掃除をしたりします。少人数のマンションなので、住み心地がよいです。周りの人と自然なお付き合いができます。
北川:私自身にとっては、「地域」は自分の住宅周りではなく、いぶきの周りになってしまっています。地域の人と名前を呼び合える関係になりたいんです。いぶきの仲間たちが地域の人から名前で呼ばれるようになったら、感動するかもしれません。
北川:山本さんは、地域の人をみんな知っていますか?
山本:子どもが小さい頃は、よく散歩に出かけていたので、地域の人とよく話していました。団地なので、そこのエリアの人しか通らない道があり、そこで会う人とはよく話します。
北川:なるほど。
山本:子どもが大きくなると、外に出る機会が減ってしまい、私も仕事の行き来が多くなってからは、あまり地域の人と交流がありません。でも、何かあった際には、声をかけやすいですね。

いぶきの仲間との交流
北川:いぶきの仲間たちが、地域の人と名前で呼び合えるようになるには、どうすればよいでしょうか?
山本:「えんがわマルシェ」というイベントを月に1回開催していますが、そこで顔なじみの人が増えてきました。地域の子どもたちの名前を呼べるようにもなってきました。継続的に何か一緒にやることで、自然と名前を覚えるようになると思います。
北川:勝又さんは、いぶきの仲間の名前を知っていますか?
勝又:最近、覚えが悪くなりましたが、百々染の方のお名前は覚えています。
山本:勝又さんが、いぶきにいらした時、いつもfacebookに登場する仲間の顔を見て「〇〇さんだ」と声をかけてくださった時は感動しました。
北川:直接的な交流はなくても、画面を通して顔を知っているだけでも、親近感が湧くのかもしれませんね。
勝又さん:何回も顔を見て、名前を聴いたりしているので。スタッフのみなさんのことも、オンラインやイベントでお会いするうちに、知っている方が増えました。

良い意味での「ゆるさ」
北川:いぶきに対する親密度は、会ったことがあるかどうか、頻繁に目に触れるかどうかで変わってくるのでしょうか?
勝又:そうですね。
北川:やはり、来たことがあるというのも大きいでしょうか?
勝又:そうですね。オンラインで見られるのもよいですが、実際に行ったことがあるというのは、また違います。
北川:ソーシャル・キャピタルに話を戻すと、お互いを知っているということが信頼感につながると思います。今回私たちが勝又さんにお声がけした、勝又さんならお話できるという信頼感があるからです。
勝又:私の普段の活動も地域づくりなので、いろいろ迷ったり、うまくいかない時にいぶきさんの活動を見ると「いいな」と思います。
北川:ありがとうございます。
勝又:北川さんや山本さんにオンラインで講座の講師をしていただきましたが、周りの人にも伝えたいと思っています。例えば、クラウドファンディングについて話した際に、顔が見えないから嫌だと言う人もいますが、そうではなく、それを通して人のつながりができることを伝えたいのです。
北川:なるほど。
勝又:北川さんは「ゆるく」という言葉をよく使われますよね。人を緊張させない、そういう場をつくれるのがすばらしいと思います。
北川:そんなに使ってます?
勝又:ほとりも、ほっとできる場所でよいと思います。行政からの委託事業は、どうしても数値や成果を求められますが、そうではない、よい意味での「ゆるさ」 があることが大切だと思います。
まとめ
今回のインタビューを通して、いぶきが地域社会において重要な役割を果たしていることが改めて感じました。
次回の後編では、いぶきのソーシャル・キャピタルを育むための具体的な取り組みや、未来への展望について深めていきます。
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ポイント
- 強調: ソーシャル・キャピタルの重要性、いぶき福祉会の地域に根ざした活動、勝又さんのいぶき福祉会への信頼と共感
- 具体例: ねこの約束、かりんとう、マドレーヌ、百々染の展示会、クラウドファンディング、えんがわマルシェ
- 関係性: 北川さんと勝又さんの出会い、地域住民との交流、いぶきの仲間との連携
- キーワード: ソーシャル・キャピタル、信頼、つながり、ゆるさ、地域づくり