2023.01.27
passion(情熱)
- 執筆:
-
川上宏二
彼は「passion(情熱)」である。
熱い人である。
「passion」は特に納品の時に発揮される。
納品とは受注し、完成させた商品を業者に受け渡す時である。
暑い時も、寒い時も、雨の日も、雪の日も予定されている時間より前に外に出て業者のトラックを待つ。
目を輝かせ、全霊を傾けて待つ。
トラックが着くと手にペッペッとつばをかけ、手をたたき誰よりも張り切って、最前列で商品をトラックに積む。
終わると汗で濡れたTシャツのままバタリと床に倒れる。
納品のある時はいつも、時には日に何回も倒れる。
彼が利用する事業所の仲間やスタッフは、彼を「本当に働き者や」といつも評する。
その裏に潜むものは実はとても深い。
それは「passion」の過去と現在の違いである。
彼は器用とは言えない。
受注した商品に失敗は許されない。
だから、細かな作業は任されなかった。
この時、彼は卑屈さと劣等感の中にいた。
だから、納品の時だけ「passion」が強くなった。
しかし、ある時、彼と向き合い根気よく細かな仕事を伝える人々が現れた。
根気よくとは、失敗と成功を繰り返す時間。
彼はいつしか細かな仕事ができるようになった。
突然ではない。
少しずつ目には見えないようなスピードで。
彼はいつしか一日中「passion」の塊になった。
自信とプライドの中で生きている。
今日も菓子箱を全力で折り、組み立て、そして全霊を傾けて納品する。
そして倒れる。
いぶきからのコメント
かっこいいです。見つめる人もふくめて登場する人すべてがかっこいいです。この物語にふれて心震える人も、かっこいいと思います。
いぶきでも、仲間の仕事を考える時には、やりがいや給料という観点だけではなく、関係の中で育まれる誇りを大切にしています。
今日も、かっこいいねー!とたくさん声を掛け合いたいと思います。